民族大移動

大地震があったときのことです。

東京は建物の倒壊というものはほとんどありませんでした。

しかし、最大の被害はなんといっても、世界に誇れる便利な交通手段や通信手段が、一網打尽にされてしまったということです。

電車は地下鉄も含めてすべて止まってしまったのです。

車は大渋滞となり、まったく動かない。

歩くのより遅いくらいとなってしまったのです。

しかも携帯電話はおろか、固定電話ですらまったく通じない、まさしく役に立たないおもちゃのようになってしまったのです。

ですから唯一の交通手段、通信手段は歩いて移動することになってしまったのです。

弊社は品川区の第一京浜道路沿いに事務所があるのですが、多くの人はその道路をせっせと歩くことが、川崎や横浜方面に移動するのに一番簡単であり、また当時その方法しかなかったのです。

二階にある事務所の窓から見る光景は、ある意味、異常なものでした。

沢山の人間がひたすら移動し続けるのです。

それが終わらないのです。

まるで終わりのない、エンドレスのように感じるほどでした。

しかも小競り合いのようなトラブルがなく、誰かにリードされてそのルールの中で移動しているがごとくだったのです。

ちょうど、旧約聖書に出てくるイスラエルの民が、モーセに導かれて出エジプトをし、紅海を渡るがごとくといったらいいのでしょうか。

まさしく「民族大移動」

目的地まで何時間もかけて、時には道を譲り合いながら、また時には助け合いながら、ひたすら歩き続け移動する光景に、なんともいえない感動を覚えたのです。

そこに日本はまだ捨てたものではないという、かすかな希望の一端を垣間見たような気がしたのです。

Avatar photo

日本マウント

関東甲信の中古別荘、リゾート物件、 田舎暮らし物件の日本一を目指し奮闘中!! 

More Posts - Website